「かつら屋」の仕事
役者の頭に合わせてかつらの土台を作り
細かな調整を繰り返しながら丁寧に植毛します。
かつらの基礎作りを担当するのが「かつら屋」です。
【地金(台金)作り】
かつらの土台となる「地金=金属板」を切り出し、「打ち台」と呼ばれる専用の木製台座にセット。木槌、金槌、トンガリと先の太さが異なるトンカチを使い分け、徐々に頭の形になるように成形します。(写真は「丸かつら」と呼ばれる頭全体を覆うもの)
【かつら合わせ】
形の整った地金を役者とフィッティング。役作りや役者の頭の形を考慮して「くり=生え際」の形や位置をすり合わせます。ストレスなく役を演じてもらうため、痛みや違和感はないか、細かな調整を行います。(写真は既にかつら合わせが終わった段階の地金)
【植毛/毛を通す】
羽二重や網に通し針を使って毛を一本一本植えていく緻密な作業。時間はかかりますが、かつら屋の技術が問われる大変重要な工程でもあります。
【部品付け】
かつらの種類によって「三角、みの、えり」など、役に合う部品を別で作り、かつらに取り付けます。(写真は「半かつら」と呼ばれる、役者自身の髪を部分的に活かすかつら。自然な仕上がりになるため、映像作品で使用されることも多い)
【裏打ち】
かつらの裏側に汗止めのため、白蝋(はくろう)という油を塗った布(裏打ち)を丁寧に貼ります。細かな作業の積み重ねにより、ついに完成が見えてきました。
【仕上げ】
毛を櫛で束ねては熱したコテで整えます。毛を痛めないようにコテが適温になるのをこまめに確認しながら作業します。髪を結い上げる床山の作業のしやすさも考慮しながら、時折「水」や「油」を含ませ丁寧に仕上げます。
「床山」の仕事
床山とは、役者の髪や鬘(かつら)を
役柄に合わせて結い上げる職のこと。
飾りをつけ俳優に被ってもらうまでを担当します。
【癖直し/癖付け】
髪を結うための下準備。温めたコテに濡れた布を巻き、その蒸気で癖を直す(ジューする)。また、コテの温度を調節し、結いやすくなるように癖を付けます。
【根を取る】
髪の結い上げで一番肝心な作業。仕上がりを想像し、かつらの最もバランスが良いと思われる場所を決める事を「根を取る」と言います。髢(かもじ)と呼ばれるパーツを使い和紙でまとめ上げます。
【髱(たぼ)を取る】
髱(たぼ)と呼ばれる頭の後ろの下に張り出した襟元の髪。前段階で結んだ「根」に、整えた髱(たぼ)を持ち上げて結ぶ。所々で使われる紐は「元結(もっとい/もとゆい)」と呼ばれています。
【鬢(びん)を取る】
鬢(びん)と呼ばれる頭の両側面の髪を結い上げます。すき油を付けながら「すき毛」と呼ばれる毛の束を中に仕込み、役に合わせたボリュームや形状を作り上げます。とても目を引く場所だけに注意しながら結い上げます。
【前髪を取る】
前髪を結い上げます。「びん」や「たぼ」と同じように元結でまとめながら形を整えます。役者の顔を常に意識し、全体のバランスを一番に考えます。
【髷(まげ)を結う】
役柄により、太さや形が大きく異なる髷(まげ)。その種類によって性格や身分などを表すことにもなります。人物像を想像し、生活感や自然な美しさを追求しながら結い上げます。
【飾り付け】
髷にちりめん(絹の織物)の手絡(てがら)を飾り、簪(かんざし)や、櫛(くし)を挿す。それらを小間物と呼び、飾る位置や角度にもこだわります。役の身分や境遇、年齢や性格をより具体的に表す重要な作業です。写真は「銀杏返し=いちょうがえし」という結い方。